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続、ある介護体験より

  • 執筆者の写真: 小林大賀 Taiga Kobayashi
    小林大賀 Taiga Kobayashi
  • 2019年5月19日
  • 読了時間: 1分

更新日:2019年6月1日

勤務していたグループホームに帯広の祖父を入居させてもらうことになったのは、1年半ほど前。祖父はずいぶん認知症が進んでおり、家族のこともほとんど思い出せない。その日によるが、「札幌の孫だよ、大賀だよ」と何度言っても、首をかしげるくらいの応答がほとんど。ごくたまに調子が良い時だと「そうか」と言って握手をしてくれたりする。

昨年の祖父の誕生日に恒例の似顔絵描きをした。そわそわする祖父をなだめつつ鉛筆を走らせる。筆が速い方ではないけれど、この場面ではスピードが大事。いつトイレに立ち上がってしまうかわからない。黙々と描く。30分ほどして描きあがった絵を見せた時、こちらから何を求めるでもなく祖父の口がひらいて「大賀?」と言った。この日は一度も「孫だよ」とも「大賀だよ」とも声かけしていないにもかかわらず名前を呼ばれる驚き。

「アートのもつ力」といって300ページもの本を読んでもちんぷんかんぷんだったりもするが、こういう出来事を目の当たりにすると、やっぱり何かあるのだなと思わないわけにはいかない。



 
 
 

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